AYA(思春期・若年成人)世代がんへの取り組みについて

1)AYA世代とは

思春期・若年成人世代をAYA(Adolescent and Young Adult)世代といい、定義は様々ですが、広くは15歳から39歳までを指します。この世代は、がんの罹患率や死亡率が最も低い世代であり、これまでがん対策の対象にはなっていませんでした。

2)AYA世代のがんの特徴

0歳から14歳までの小児期に発生するがんを「小児がん」といい、発生数が多いものから順に、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、神経芽腫と続きます。
成人世代では、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、などが患者数の多いがんです。AYA世代は、小児と成人の中間にあたり、小児がんと成人がんの両方のがんが発生し、最もがん罹患者数が少ない小児期から、徐々に罹患者数が増加していく時期にあたります。

罹患数順位

0-14歳

15-19歳

20-29歳

30-39歳

1位

白血病

白血病

性腺腫瘍

乳がん

2位

脳腫瘍

脳腫瘍

甲状腺がん

子宮頸がん

3位

リンパ腫

リンパ腫

白血病

性腺腫瘍

4位

神経芽腫

性腺腫瘍

リンパ腫

甲状腺がん

5位

軟部肉腫

骨腫瘍

子宮頸がん

大腸がん

 

 

0-14歳

15-19歳

20-29歳

30-39歳

推定年間罹患数

1891

756

3885

15617

*日本で新たにがんと診断される人は年間約86万人(2013年罹患全国推計値)

3)AYA世代のがん患者さんが抱える問題

  1. 治療成績

がんの種類によっても異なりますが、AYA世代がんの治療成績は、他の年齢層よりも良くないといわれています。

AYA世代がんの治療成績が良くない理由として、「患者さんの数が大変少ないため、治療方法の開発が遅れている」「高齢者に比べて進行が早いがんが多いこと(がんの生物学的相違)」「がんになることが少ない年代であるため、患者さんも医療者もがんを疑おうとしなかったり、自身の生活や仕事を優先して、医療機関の受診が遅くなりがちになる」などが考えられています。

2.患者さんをとりまく環境

思春期世代では、心身の成熟とともに親からの自立の過程にありますが、がん治療により、学業や就労が遅れたり、中断するなどの影響を受け、人生設計の変更を余儀なくされる可能性があります。若年成人世代では、家庭や社会での活動が中心となりますが、がん治療により、仕事や子育て、介護などへの影響が不可避となります。

こうした問題による不安から、精神的ストレスを抱える患者さんも少なくありません。また、がん治療は、不妊のリスクを伴うため、生殖年齢にあるAYA世代がん患者さんの将来の挙児希望にも配慮が必要です。

さらに、18歳未満発症の方には小児慢性特定疾患、40歳以降では介護保険といった公費負担制度がありますが、AYA世代の患者さんには、こうした制度がなく、経済的負担も生じます。

4)名古屋医療センター小児科では、25歳までのAYA世代がん患者さんを受け入れています。

日本では一般に、高校生以上は成人診療科で診療されますが、15-19歳の思春期世代では心身ともに発達過程にあることから、日本小児科学会では小児科での診療を推奨しています。また、20代前半くらいまでは、小児がんの発生が多いため、名古屋医療センター小児科では、25歳までのAYA世代がん患者さんを診療しています。

AYA世代小児がん患者さんのよりよい治療のため、以下のような取り組みをしています。

・チーム医療
 医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、
 栄養士、チャイルドライフスペシャリスト、臨床心理士、ソーシャルワーカーなど多職種で、患者さんに
  とってよりよい治療を提供します。

・妊孕性温存のための取り組み
 がん治療を行うことで、妊孕性が失われる可能性があります。がん治療の前に、精子
 保存、受精卵、卵子、卵巣組織保存などについての情報提供や生殖医療専門施設への
 ご紹介を積極的に行っています。

・療養環境
 スポーツアクティビティを週1回、院内の体育館で開催しています。
 患者間の交流を図るため、ボランティアさんの協力を得て、イラスト、音楽、アロマなどの
  企画も実施しています。

・ピアサポート
 治療を終えた元患者さんと入院中、通院治療中の患者さんの交流の場として夏・冬・春休みに
「テイーンパーティ(TEENPARTY)」という名称で語らいの場を開催しています。

・教育支援
 高校生は原籍校と相談し、訪問教育やプリントでの学習支援を受けています。
 病棟内に学習室を整備しています。
 入院時、退院前には原籍校の先生方と学校調整会議を持ち、患者さんご本人・ご家族
  ・学校(院内、原籍校)・病院(主治医、担当看護師など)が相談し治療と勉学の両立が
   できるようにしています。

・治療の選択についてー臨床試験、治験
 AYA世代がんは、患者さんの数が少ないことから、標準治療が確立していない希少疾患も多いです。

 名古屋医療センターでは、企業治験や医師主導治験を実施し、患者さんに新しい薬の 選択肢を提供しています。(臨床研究支援室ホームページ参照

名古屋医療センター小児科のAYA世代がん患者さんの受け入れ実績

新規受け入れ数

平成26年

平成27年

平成28年

平成29年

造血器腫瘍(白血病・リンパ腫)

14

12

12

13

固形腫瘍(骨軟部肉腫など)

20

14

20

15

うち高校生以上(AYA世代)

12

8

13

10